「イマジナリー・ライン」という言葉をご存じでしょうか。
映像制作の専門用語で、劇映画やテレビドラマなど、映像でお話を描くときに登場人物の会話場面を効率よく撮影するためのテクニックにあたります。
映画の教科書的な本には、だいたいどれにも解説がある基本中の基本用語です。
ですが、これを本だけで理解しようとすると、とても難しい。
以下の文章で理解できるでしょうか。
二人の話者がお互いの目をみて会話している、こういう良くある場面の撮影です。このとき、まず、向かい合う二人の間に頭のなかで線を引きます(想像上の線=イマジナリー・ラインをおくということ)。それから、その線の右側/左側どちらか一方の範囲だけにカメラ位置を絞って、話しているそれぞれの表情を撮影するようにします。すると、役者さんの良い表情をとらえるためにカメラを動かし回しても、撮れた映像は、お互いの目線が右向き/左向きに向き合うように撮影できていて、編集ソフトで会話する二人をきれいにつなぎ合わせることができる。こんなテクニックです。
教科書には、図入りで説明してあるのですが、現場の位置関係を想像できないと頭がこんがらかってしまいます。本の説明だけだと、どうしてそのようにうまく撮れるのか、ということがなかなか納得できません。
そこで、「教養ゼミ」の輪読回では、映画の教科書の説明を読みながら、教室で撮影をやってみることにしました。カメラをもって、どの位置からどんな映像が撮れるのかを確認しながら実際に撮影してみます。そうすると、いかにこの「イマジナリー・ライン」が、撮影現場で編集のことを悩まずにすむ便利なものかが体験的にわかります。